イタリアスキー実体験レポート メンバーズボイス・アンケート イタリアスキー達人のコメント

2002 season 最新実体験レポート

アルプスキークールマイユール&チェルヴィニアと南イタリア
2001.2.17〜2002.3.5
川田 良吉[初回]

マッターホルンの麓チェルビニア

マッターホンの眺望

 水曜日、プラトウローザへ直行し、ゴンドラ1本で足慣らしをし、再びプラトウローザ(Testa Grigia)へ。クラインマッターホンのゴンドラは動いてないがクラインマッターホンから、逆C字にプラトウローザ氷河の縁を巡る5、6本のTバーリフトとこれにつながるTesta 1が動いている。薄日で無風。よしとばかり、すぐスイス側へ滑る。Trockener Stegまで落差540m距離4kmを直行してプラトウローザ氷河とこれにつながるテオデューロ氷河を滑る中級コース。マップはざっと頭にあるが、未知のロングコースを滑るのは痛快極まりない。Trockener Stegで早めのランチ。ここからのマッターホンは右4分の3が白銀の東斜面。更に落差500m距離2kmを滑ってFurgg。ここからのマッターホンは全面が白銀の東斜面で、均整のとれた縦長の三角形の斜面は左右を黒い巌で縁取られ青空に屹立する。右の黒の縁取は北斜面。東斜面をよく見ると中央がほんの少し凹んだ岩盤にほぼ水平な断層が薄く見えて氷雪がへばり付いている。このような断層はエベレストにも見られる。Furggからゴンドラで500mを北西へ乗りSchwarzseeへ。

 Schwarzsee(2583m)からのマッターホン(4478m)の眺望は端正で秀麗である。白銀の矢尻のような東斜面が、右の更に急峻な黒い屏風巌の北斜面で支えられ、両斜面のリッヂは鋭いナイフエッヂをなして斜度45度を越える。北斜面の北西リッヂは天空を切り取る。白銀の東斜面に対して黒の北斜面はその3分の1であり、この大小関係と白黒のコントラストは絶妙である。東斜面と北斜面は、足下の周辺の山塊(海抜2300m前後)から2000mは突出し、マッターホンは独立巌峰、巨大な石斧なり。足下からやや緩やかな氷河を従え、海抜3000mを超えてから斜度を急速に増して氷河は消え頂上に至る。頂上直下200m程は東斜面も氷雪が吹き飛ばされるのか巌肌を露出する。巨大な石斧の突出の時、南東、北東及び北西に長いリッヂを衣の裾のように引きずり上げるかのようである。

 地形図によれば、頂上(4478m)の西に100m程で2m下がった尾根が寄せ棟のようにある。そこから南西陵に厳しいキレットを持ってPic Tyndall(4241m)がピラミッドのように続く。これらがマッターホンの南側(チェルビーノ)の眺望を複雑にする。ここでも「山は方向により姿を変える」。 Pic Tyndallでエベレストのウエストショルダを想像する。



 SchwarzseeからFurggへ下りてイタリアへ急がなくてはとゴンドラを探して建物の周りを探すが別なゴンドラであったりして入口が見つからない。日陰に腰を下ろしてピクニックしている夫妻に尋ねると反対側を指してポケットからゲレンデマップをくれた。あなた方も必要でしょうと言ったが、もう要らないと言う。私が持っているものより大きいスイス発行のマップで、要所要所に日本語が印刷されている。サンキュウベリマッチでその入口に周る。建物にもトイレなどとペンキで日本語表示があるが下手な文字。いずれにしても、観光立国スイスの意気込みを感じる。Trockener Stegからのクラインマッターホンゴンドラはやっぱり動いていなかった。 Schwarzseeでツェルマットへ滑り下りようかと迷ったが、行かなかったのが正解。山の鉄則。 Trockener Stegから3本のTバーリフトを乗り継いでTesta Grigiaへ着く。3本計4000mのTバーは楽ではない。前の人が脱落して滑って戻るのにも遭遇した。

 Testa Grigiaからプラトウローザ氷河の丸底の真ん中でTバーリフトを2本使い滑ったが周りはクラインマッターホン以外は丸底の縁が見えるだけ。ガラガラとリフトの音が丸底に木魂する。スキーヤーも数えるほど。スキーはピステのみによらず、周囲、特に山岳に抱かれる感覚が気分を高揚させる。ここを氷河と記したが、地図では「プラトウローザ」とのみ記され夏スキーで賑わう。ちなみに、氷河は流れが岩肌を削るとき命名されて万年雪と区別され、日本アルプスの涸沢は、昔、登山界で万年雪だ氷河だと論争があったが、氷河の名残り説が定着したと聞く。マッターホンの足下でスイス側をとりあえず滑ったという満足感でイタリア側へ戻り、チェルビニアへ帰る。


ツェルマットへ決行

 木曜日は私のアルプスキーの最後の日、昨日と似たようなうす曇りの中をプラトウローザ(Testa Grigia)に上がるとクラインマッターホンのゴンドラが動いているではないか!青い空に雲量30%。

 やると決めた。スイスではユーロが通用しない。スイスフランとスキーパスを持たないのを確認する。ゲレンデマップは昨日、いいものを貰った。Testa Grigiaから、Trockener Steg、そしてFurggまでは昨日と同一のコースで中級。ここからSchwarzseeをカットして初めてのコースになり、Furi経由でツェルマット町の南端ビンケルマッテンに至る。 FurggからFuriまでは山の間の厳しい2kmのコース、Furiからビンケルマッテンまでは斜度は少ないが1.5kmの狭い生活道路で右左の曲がりが多い。左に雪の川原に細く青い水のせせらぎを見せるきれいな小川を見て橋を渡ると雪は途絶える。ビンケルマッテン(1600m)である。
Testa Grigia(3479m)から10kmの滑り。頭のマップと、マルコの自ずとゼルマットに向かうを信じ、脇道をせず、ハードに滑る。



 この橋を渡るとすぐにバスが待ってる。右上にゴンドラの始点があるのを確認する。スキー板を担ぎスキー靴でバスに乗ると、1km、10分程で運転手が終点だと告げる。ユーロはだめだと言い、こちらは、スイスフランとスキーパスを持たない。少しだけ押し問答があって間をあけてから、運転手はあごをしゃくり、OKサイン。話が通じない時には皆、良心が道を開く。コインが無いので板を道端の鍵付き有料スタンドにそのまま立て掛け、バンコマートを聞いたり歩いたりして探すが正午を過ぎたばかりでらちがあかない。鉄道駅舎前の広場に2頭立ての観光乗合バスが静かに佇んでいる。町は狭い道の両側に高さをそろえて個性的な建物がツェルマット的に並ぶ。とあるレストランらしき所に入り、Guten Tag。ランチとキャッシングができるというので、席を取る。ゆっくりと少量で美味いものを戴く。例えばパンは柔らかい。勘定で立つとお客も少なくなって東洋人らしき3人づれに、チェルビニアに帰るビンケルマッテンへの道を聞くと「ヤバイッスヨ!」と日本語に続いて指を指して「あっちの方向、急いだほうがよいです」とのこと。クレジットカードで勘定をして外へ出ると1時30分。スキー板を取りに戻ると、丁寧に板は有料スタンドのすぐ脇に置き換えられている。写真を2、3枚撮り、ピンバッジを買いながらスキー靴でコツコツとビンケルマッテンの方向へ歩く。10分程で左上にツェルマットのゴンドラ駅舎が見え、エレベータで乗り場に着く。

 昼食の Derby Hotelで両替したスイスフランでスキーパスを買う。ツェルマット町では時刻のせいか人は少なかった。
 ツェルマットからクラインマッターホンまでは、Furiと Trockener Stegとを経由するだけでダイレクトに3本、9kmのゴンドラで到着する。Furiまででタイツ姿の若者がクロスカントリスキーを抱えているので、聞くと自転車で鍛えていると言う。ももを掴むと、まだ弱いですと。Furiの左には広い平らなクロカンピステがあった。 Trockener Stegまでは右に昨日見たマッターホンが緩やかに姿勢を変えて行く。これが全くすばらしい。誰もがこれに魅了されるのだろう。 Trockener Stegからクラインマッターホンまでは待ちに待ったゴンドラ。つるべ井戸方式。前方のクラインマッターホンの頂上近くの窓にケイブルが差し込まれている。右手には午前に滑ってきたピステやリフトが見える。

 クラインマッターホンの駅舎でゴンドラを降りるとトンネルがゴンドラの方向にまっすぐ延びてるだけなので、おやと思ったが、7、8人のスキーヤーの後を歩く。少し行くと先に出口が明るく見えて200m程か。途中に3883mの頂上へのエレベイタと大きい案内表示がある。板を立て掛け左折してエレベイタで上がり、エレベイタホールからドアを開けて屋外へ出ると全く寒い。外は頑丈な鉄格子の床と手すりのテラス。出て左に更にトップに登る鉄の階段があるが登るのを止める。ワンショットを撮ってもらい温度計を見るとマイナス16℃。エレベイタホールに入りガラス窓を見ると、ガラスの内側に雪印の氷の結晶が一面に見事な模様をディスプレイしている。結晶のそれぞれは1cmか。垂れた水滴やぽつりとある水玉がそのまま結晶して自分の成り立ちを表現している。雪印の結晶スクリーンは屋外の青、白、黒、茶の自然を見事に写し出す。

 トンネルに戻って板を担ぎ南の出口に向かう。トンネルはあばら骨のようにコンクリートで囲まれて岩石が露出している。側に落ちてる小石をやめて、ストックで壁を突つき別な岩石をポケットへ。トンネルのドアを開けると外は銀世界。振り返ると出口の左にSnack Bar-Buvetteハ Klein Matterhornハ 3800mと看板が。10人ぐらいが滑走準備をしている。前を見ると大変緩やかな鞍部が1500m先のゴッバディロリンまで2本のTバーでつながっている。右に昨日滑ったTバーの先1500mにTesta Grigia(3480m)が見える。これらのTバーリフトは合わせてプラトウローザ氷河を囲む逆C字をなす。3800m、気温マイナス16℃、気圧・酸素濃度は海面上の62%。スキー板を着けストックを握る。

 3800mからスキースタート。初めにストックを突くと「キュッ」。この音と感覚は初めてで、周波数が高く微かな音。ストックを握る手への反力は極僅か。北海道ニセコでもない。パウダースノウとかアスピリンスノウの概念を超える。プラトウローザ氷河を囲む逆C字の縁を、また丸底の中央の1200mのTバーに沿うピステをゆったり楽しむ。歌はヨーデル。国境を示す赤いポールが20本ぐらいピステに立っている。これをシュラロームに見立てTesta Grigiaへ滑走。初級コース。ちなみに偏西風を前提にすれば、Alp(複数はsが付く)は大西洋から1,000kmのヨーロッパの陸地の東に位置し、The Japan Alpsは日本海から1,000kmの海の東に位置する。よって雪の乾燥度は変わる。

 Testa Grigia(プラトウローザ)でイタリア側へ至る。東に山を控えるクールマイユールは朝が遅いが、西に山を控えるチェルビニアは夕暮れが早い。途中でサンドイッチと水で一休み。左際のできるだけハードなコースをたどった時、オフピステに突入、9日間、雪には板とストック以外触れてないので、ここが最後のがんばり所と5m程を上り切って脱出。最後の急斜面を丁寧に滑ってブリュウルに安着。レンタルスキーを返却してアルプスキーを完了。

 金曜日の朝9時30分、トリノ空港までの送迎車は思いがけずマルコだった。昨日無事にツェルマットまで行った、アルペンメトロでスネガや登山電車でシュトックホンへ行きたかったなど話した。マルコは喜んでくれて、ツェルマットまでは行くことが出来たと思ってたし、スネガなどはそれぞれ1日でOK、来年また来いと付け加えた。


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